酒場遺産
ディープジャパン。今や都市開発の中で消えようとしている古くから続く酒場。日本の生活文化が凝縮されている酒場を「酒場遺産」と名づけた。これから十年後、ここで紹介する酒場のうちいくつが残っているだろうか。
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上の鳥のいわさき(上野の創業57年酒場)
ディープ度**、食と酒**
上野南口の丸井裏のネオンと喧噪に満ちた通り。釜山の市場を思わせるようなアジアの空気が流れている。上野周辺は意外に古い酒場は少ないが、「上の鳥のいわさき」は創業1949年の老舗だ。店内は古い酒場の雰囲気はなく、若者で溢れる良心的で気軽な居酒屋といった感じだ。創業以来の変わらない特製つくねが自慢だという。モットーは、冷凍素材には頼らない、テーブルチャージはとらない、無駄なところにはお金は使わない、という3ナイを守っているという。年中無休。東京都台東区上野6-13-7。03-3831-3401。

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江戸っ子(聖橋袂おでん屋台)
★ディープ度**、食と酒**
お茶の水駅近く聖橋の脇に「江戸っ子」という赤提灯の屋台がある。この付近には、もうひとつ老女の牽く屋台があったが、約半年前から姿が見えない。元々客のつかない不人気の店だったが、老女が体を壊したためらしい。凍える冬も覆いのない小さな屋台でギリギリの様子だったから無理もないだろう。さて「江戸っ子」。以前は聖橋の南側、駅のすぐ脇の端の付け根のアルコーブ(凹)となっている部分に長い間、夜な夜な現れていたのだが、最近は聖橋北側に移った。店の親爺に理由を聞くと、南側は千代田区、北側は文京区。千代田区所管の警察官が年度末の手入れで屋台を追い出し、文京区側に来たという。不思議なことに文京区側に来てからは、その警察官は来ないという。「文京区の所轄が来たら、また端の南に行くさ」と笑う。端の北側では千代田線とJR間の乗換客を掴まえられず客数は半減したという。今は常連だけらしい。「江戸っ子」は親爺個人の物ではない。浅草の居酒屋「江戸っ子」のお茶の水支店なのだそうだ。店主も今の親爺の前はもっと若い人だったから、社内の人事異動なのだろう。
寒い時期には、店をビニルで囲うが、公共の鉄製の大きなベンチを上手く利用している。美しく堅固な石造りの凹空間に上手く納まっている屋台の様子がいい。病院やオフィスの並ぶ硬質なこの通りの風景の中で、赤提灯の灯りと街灯の光を反射する柔らかなビニルが美しい。
メニューはおでんのほとんどは150円、250円。牛筋などは400円。飲み物は350mmの缶麦酒(スーパードライ)、日本酒(剣菱)、酎ハイが500円。おでんは薄い味付けで特に上手くも不味くもない。味よりも空気を楽しみたい。先日、立ち寄ったときは、店のテレビで「シャル・ウイ・ダンス」がはじまり、常連客たちとおでんをつつきながら、11時半まで2時間半、最後まで見てしまった。主人は商売気もなく一緒にテレビを見ている。これではさぞかし儲からないだろうなと思った。
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店名不詳 おでん屋台 (上野不忍池畔南側)
★ディープ度***、食と酒の満足度**
深夜、不忍池の畔を歩いた。上野の杜がネオンでぼんやりと明るい空に真っ黒なシルエットとなる。人気のない池の南縁に、「おでん」と書かれた屋台の赤提灯が闇の中で光っていた。店主とひとりの中年の客がその灯りに照らされて立っていた。僕はその脇に割り込み、熱燗と大根・蒟蒻・牛筋を頼む。角が丁寧にカットされた綺麗な大根だった。


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大統領 (上野ガード下 アジア喧噪酒場)
★ディープ度****、食と酒の満足度*
上野駅から御徒町方面へ山手線沿いに南下すると、そこはまさしくアジア。ガード下にあるモツ焼きで有名な「大統領」は、酒場遺産で紹介する他の渋くて燻し銀の酒場ではない。酒も食もこれといって旨いものはない。しかしこのいい加減な半外部空間の魅力には抗しがたいものがある。下世話なアジア的喧噪が上野のこのあたりに集約されている。台北の龍三寺裏のいかがわしい路地を思い出させる。生蛍烏賊470円、ガツ刺し470円、レバ刺し470円、モツ煮込み420円、鰯刺身420円、白子酢520円。

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みますや (神田司町創業明治38年)
★ディープ度****、食と酒の満足度*****
都内の酒場の中で、酒・料理・酒場空間どれをとっても最高の酒場のひとつ。鶯谷の鍵屋、荻窪のやき屋、虎ノ門の鳥でん、町屋のときわ食堂と並ぶ存在だと想う。明治38年創業の老舗。料理はリーズナブルで、どれをとっても間違いなく旨い。柳川鍋800円、牛煮込み600円、ばい貝やわらか煮500円、季節のぬた400円、牛にこみ600円、さくらさしみ1300円、どぜう丸煮600円、肉豆腐400円、刺身盛合せ1500円。酒は灘の名高い白鷹本醸造二合 800円、立山、八海山本醸造が一合750円。その他、磯自慢、日置桜、南部美人、くどき上手、いずれも750円。焼酎はダバダ火振り、魔王、佐藤など750円。
店は土間の叩きに木製のテーブルが並ぶ。奥の左手には座敷があり、とても居心地がよい。人気の店なので、予約を取っていった方がよい。03-3294-5433、03-3295-4371。千代田区神田司町2-15。営業時間は17時から23時。日祝休。
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鍵屋(根岸 時間が磨く酒場空間)
★ディープ度*****、食と酒の満足度****
鶯谷駅南口からゴチャゴチャした道を抜け、大通りを越え、銀行脇の通りから根岸の住宅街にはいると、民家のような構えの鍵屋を見つける。江戸幕末に言問通に酒問屋として戦後開かれたが、その後、小金井公園内東京江戸建物園に移設・保存されている。店の木槌、甕などの道具、ポスターが古い壁一面に並ぶ。左側には畳の小上がり、右手には主人の座る白木のカウンターがある。背筋のピンとした女性が、箸、お通し、お猪口を配す。鰻のくりから焼(610円)、鳥もつ鍋(660円)、冷奴(490円)、煮奴(550円)、たたみいわし(610円)など。酒は甘口桜正宗のお燗(500円)、辛口菊正宗のお燗(500円)。
特に特別なことはない。しかし、日常の時間が磨き込んだ空間の美しさ、清々しさ、暖かさは他のどこにもない。

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佐原屋(御徒町ガード下鰻寝床空間)
御徒町駅近くの山手線ガード下の酒場。この並びには御徒町・上野界隈ならではのディープな酒場が並ぶ。佐原屋は創業58年。店は間口が狭くウナギの寝床のように奥行きのある構成。列車の車内を思わせる。店にはいると、右手に長さ20メートルはあろうか、長いカウンターがあり、客は一直線に並ぶ。奥の方の左手には厨房があり、配膳口にもカウンターがあり、常連客が座っていることが多い。湯豆腐、ピーナッツ味噌、大蒜の芽の炒め物、畑のキャビアなど種類も豊富。店のオーナーらしい高齢の女将は愛想がよい。不思議に落ち着く店で、何故か何度も足を運んでしまう魅力のある店だ。03-3831-6388
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まきしま酒場(御徒町 老舗酒屋立呑み)
大正時代から続く酒店である。牧島酒店は御徒町駅を出て山手線より一本東より通りにある酒屋である。夕方ともなれ場、酒屋のカウンターに、地元の人、通勤帰りのサラリーマンがたくさん集まってくる。主人は小樽出身の70才。その年齢に見えない主人は開店の間、自分でも酒を飲み、集まった客と実にいい感じで会話を交わす。奥さんもカウンターに入る。チャッミーという名の猫が店の中をうろうろする。

この店で驚くのはその料金だ。ビールの大瓶370円というのは、まさに酒屋から仕入れる価格そのままだ。この酒屋では火を使わないので、全てつまみは「乾きもの」だが、これが侮れない。先日店に入ったとき、僕はビールを頼んだ後、つまみとして、さまの水煮の缶詰(300円)、湿ったグリーンピース(150円)、湿ったピーナッツ(150円)。どれも絶品と言って良い旨さだ。椅子は1脚もなく、ミカン箱を重ねたテーブルがおいてあるのみ。

酒は菊正宗の熱燗(270円)の他、八海山、補佐鶴などが300-400円で呑める。酒を飲んでいるうちに、段々とまわりが騒がしくなってきた。地元の客が何か歌を歌い、まわりの客達がそれをはやし立てる。そんな下町の共同体の感覚がこの酒場には残っている。(志)

店主

テーマ:居酒屋 - ジャンル:グルメ

body> このごろ酒場や居酒屋の本が充実してきました。私は太田和彦氏、吉田類氏、大川渉氏の本を愛読しています。中でも大川渉氏らの著した「下町酒場巡礼」は名著。紹介されている酒場の幾つかはこの10年間に姿を消しました。 https://www.fis.jfma.or.jp/fis/front/htm/research/scm10/image/scm10_2003wwp_dallas_illust.pdf